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銀行デビットカードでの決済と販促の連動

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決済業界の人間に「販促」というとまず思い浮かぶのがポイントプログラム。携帯キャリア、ネット系企業、コンビニ、家電量販店、日用品店など様々な事業者がポイントカードによる販促を展開しており、さらに専業の共通ポイントも広く普及しています。

しかし消費者の立場でポイント集めにハマると出てくるのが、「ポイントカード多すぎ問題」。財布の中がポイントカードで一杯になってしまいますし、既にキャッシュレス化している人は、決済はスマホで済むのにポイントカードは持参しなければならないという不思議な状況に陥ることもあります。

そこで今回は、小売店の独自ポイントカードをデビットカードに紐付けることで、決済とポイントカード販促を融合させている英国の銀行の事例を紹介します。

AndreyPopov/Bigstock.com

ポイントカードを集約するアプリ

買い物をするときにポイントカードは忘れずに提示したい、しかしポイントカードが多すぎて持ち運びづらい。そんな問題を解決するアプリは既にあり、たとえば「スマホサイフ」や「Stocard」があります。これらはポイントカード情報をアプリに登録することで、手持ちのポイントカードを全てアプリに集約してしまうことができます。店頭ではアプリ上でポイントカードを提示すればポイント還元を受けられます。

かなり便利そうですが、買い物のユーザ体験(UX)としてはまだ改善の余地がありそうです。レジでポイントカードをアプリで提示したあとで、決済用のカード or アプリ or 現金を出さなければなりません。つまり、ポイント還元と決済がまだ分離しています。

 

決済とポイント販促の連動

そこで注目したいのが、英国Barclays銀行の事例です。2018年2月、「Payment Linked Loyalty(決済連動型販促)」を看板にする英国のスタートアップBink社への出資と提携を発表しました。

この提携によって、以下のような買い物UXが実現されます:

  1. 消費者は、保有しているポイントカードを、Barclaysのデビットカードに紐付ける。(※提携している小売事業者のポイントカードのみ)
  2. 消費者は、提携小売事業者で買い物する際に、ポイントカード提示しないで、単にBarclaysのデビットカードで決済する。
  3. 提携小売企業のポイントが自動で加算される。

もともとBinkは、上掲の「スマホサイフ」のように、複数のポイントカードをまとめるアプリを運営していました。それを発展させた「Payment Linked Loyalty」では、Barclays銀行との提携のように、決済カードで決済するだけでポイントも貯まるようにするものです。

普段の決済をBarclaysデビットカードに集約しているような消費者にはかなり便利になりそうです。

参考情報:

 

決済連動型販促の動向

キャッシュレス決済サービスといえば何といっても国際ブランドカード決済ですが、もともとは加盟店向けの送客サービス/販促サービスという位置づけであり、その本質は今も変わっていません。

ですので、キャッシュレス決済サービスを検討する際には「どんな送客と販促が可能になるのか」が論点になります。今回紹介したBarclays事例も、小売店のポイントカードと決済カードをひとつにまとめるという点でそれが顕著に現れています。

今回の事例は決済カードに販促プログラムを連動させるものですが、同じ路線のサービスは幾つかあります。

まずはCLO。「Card Linked Offer」の略称で、米国で一定の成功を収めています。これは小売店とカードイシュア(発行者)が提携して実現する形態です。消費者がネットチャネルでカード利用明細を確認する際に、提携小売店の販促クーポンが表示されます。消費者は利用したいクーポンに当該カードを登録すると、あとは当該小売店でカード決済するだけで、クーポンが自動適用されるというものです。クーポン登録さえしておけば、店員にクーポン提示する必要さえないというものですが、特定イシュアのカード保有者で、かつカード明細をWebで見る人だけが対象となる点は、日本では大きな制約となっています。

そのCLOの発展形のひとつに、英国のTail Offersがあります。クーポンアプリといえるものですが、選んだクーポンを銀行デビットカードに紐付ける点がCLO的です。ユーザーは来店してそのカードで決済するだけでクーポンが自動適用されるのはCLOと全く同じです。

そのTail Offerですが、今のところ対日本応しているのはBarclays銀行とMonzoのデビットカードのみ。Tail Offers自体はAISP(口座情報サービス事業者)免許を持っているので、ユーザーの口座明細をAPI経由で参照し、決済履歴に基づいてクーポンによるキャッシュバックを実行することができます。英国を含む欧州で銀行APIの制度が本格運用されるようになれば、Tail Offerは全ての銀行のデビットカードに対して同様のサービスを提供できるようになります。

従来は決済は決済、販促は販促、と分かれており、なかなか連動させることは技術的ハードルがありました。それが近年のフィンテックの興隆と、銀行APIといったインフラ整備のおかげで、決済と販促をうまく連動させるサービスが出現してきています。

関連情報:

(インフキュリオン メディア&ラボ事業部 森岡剛)

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