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フィンテック10大ニュースで2018年を振り返る

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2018年が終わろうとしています。数年前はバズワードでしかなかったフィンテックは、今では日本経済のトピックの一つとして、金融・決済を起点に多くの業界にインパクトをもたらしています。

フィンテックによる市場変革が現実となり、さらに加速してゆく節目となった2018年。さまざまな動きがありましたが、今回はインフキュリオンが選んだ10大ニュースでこの1年を振り返りたいと思います。

TierneyMJ/Bigstock.com

 

(1)QRコード決済の熱戦が一気に白熱

決済分野でのフィンテックといえばQRコード。2018年は、複数の大きな国内QRコード決済サービスが動き出した年でもあり、競争が一気に白熱化した印象的な年でした。

2018年以前から既に「Origami Pay」、「LINEペイ」、「楽天ペイ」がサービス提供していたところに、2018年にはNTTドコモの「d払い」、ヤフーとソフトバンクの共同出資による「ペイペイ」が開始したほか、KDDIもQRコード決済への参入を表明し三大キャリアが出揃いました。さらに「アマゾンペイ」も始まったほか、メルカリも「メルペイ」を準備しているとのことです。

大手プレイヤーの顔ぶれが出揃って競争が始まったばかりでなく、市場獲得競争は一気に白熱しました。6月にはメタップスが「pring(プリン)」が加盟店手数料0.95%で業界を驚かせたのもつかの間、「LINEペイ」は(期限に関する条件はあるものの)手数料無料化で大きな衝撃を与えました。

手数料無料化は加盟店獲得施策ですが、消費者ユーザー獲得のキャンペーンといえばなんといっても12月の「ペイペイ」の100億円還元キャンペーン。20%という破格の還元率で多くの消費者が店舗に殺到する様が大きく報道されました。「LINEペイ」も20%還元キャンペーンを年末まで実施するなど、ユーザー獲得は体力勝負の総力戦となった感もありました。

手数料やキャンペーンだけでなく、決済のユーザー体験(UX)においてもQRコード決済の重要性が見えた年でした。ここで取り上げたいのは「Japan Taxi Wallet」。まさにQRコード決済ならではの利便性を実現したサービスで、2018年になって利用可能場所を全国に広げていっています。タクシーをもっと便利に使えるようにする過程で自然にQRコード決済が埋め込まれているという点で、日本のキャッシュレス化において大変参考になる事例です。

決済を起点に様々な業界を巻き込む大きなうねりとなったQRコード決済。2019年もその勢いは留まることはありません。

 

(2)オールジャパンのキャッシュレス推進協議会が活動開始

IT活用で金融サービス利用のすそ野を広げようというフィンテック。その前提には、ITで活用可能なデータ、特に決済データがあることが前提ですが、現金決済ではそもそもあまりデータが残りません。フィンテック推進には、決済のキャッシュレス化が必須です。

2018年は日本のキャッシュレス推進が大きな動きとなった年でした。日本の民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済(カード決済+電子マネー)の比率は20%程度。政府は「未来投資戦略2017」で「2027年までに40%」という目標値を掲げていたのですが、経済産業省は今年4月に公表した「キャッシュレス・ビジョン」において「40%を前倒しで達成、そして世界最高レベルの80%を目指す」という野心的な目標を設定したのです。

先進的キャッシュレス国家を目指すにあたっては、官庁の旗振りだけでは不十分。「キャッシュレス・ビジョン」は、産官学連携によるオールジャパンの推進体制の確立も提言していました。

それを実現するかたちで7月に発足したのが「一般社団法人 キャッシュレス推進協議会」。メガバンクや携帯キャリア、小売やネット企業や官公庁、自治体など200社を超える企業と団体が集まる、まさにオールジャパンの体制ができあがりました。現在、QRコードの統一規格や、決済関連の統計整備、レシートの電子化、自販機でのキャッシュレス、などについてプロジェクト形式で検討が進められています。

また、株式会社インフキュリオン・グループ代表取締役の丸山弘毅も、キャッシュレス推進協議会の理事を務めています。「決済×テクノロジーを軸に社会に新しい価値を生み出す事業開発カンパニー」である我々インフキュリオン・グループは、これからも日本のキャッシュレス推進に貢献していきたいと考えています。

 

(3)「電子決済等代行業者」制度の運用開始

フィンテックの代表例としてもよく知られる家計簿アプリ。大手サービスの利用者を合計すると1000万人以上もいるサービスで、保有している様々な銀行口座やカード明細の情報を一箇所で把握できる便利なサービスです。

このように、「金融をもっと便利に」というフィンテックですが、そこではユーザーが保有する口座の情報へのアクセスがネックになります。たとえば従来の家計簿アプリではインターネットバンキングのIDとパスワードを預けるのが主流なのですが、そのやり方には法的にも情報セキュリティ的にも不安要素がありました。(強調しておきますが、だからといって不祥事は一切起こっていません!)

このような背景で、フィンテック促進のために金融庁が推進したのが2017年の銀行法改正。2018年に施行されました。そのポイントは、銀行に対して、口座へのアクセス窓口となるAPI(Application Programming Interface。わかりやすい説明記事はこちらです。)を公開する努力義務を課したこと。銀行が用意するそのようなAPIを活用すると、口座情報をまとめて見せたり、振込など資金の移動を指示する新しいタイプのフィンテックサービスを実現することができます。

ただ、銀行が保有する大事な口座情報を扱うのですから、フィンテックサービス側も一定の条件を満たす必要があります。そこで導入されたのが「電子決済等代行業者」という登録制度。こちらも2018年から運用が始まり、当社グループからも、貯金アプリ「finbee」を提供している株式会社ネストエッグ登録を完了しています。銀行APIを活用することで、日常生活の中で自然に貯金(貯蓄用口座へのお金の移動)していくことができます。今までも個別の提携を通して事業を行っていましたが、事業者登録によってその法的な立ち位置もクリアになりました。

このように2018年は、銀行APIとそれを活用するフィンテック事業者の登録制度という、世界でも先進的なフィンテック促進制度の運用が開始された年だったのです。

 

(4)LINEの金融サービスラインナップ拡大

フィンテックによる金融サービス活性化のトレンドの一つに、巨大な顧客基盤を持つ非金融企業によるフィンテック参入があります。顧客の持つ隠れた金融ニーズにアプローチすることで、金融サービス利用のすそ野を広げるものです。

この観点からの2018年の大ニュースとして挙げておきたいのは、LINEによる金融サービスラインナップの大幅な拡大。11月の報道発表でその全貌が見えてきました:

  1. LINEペイ
  2. LINE家計簿
  3. LINEスマート投資
  4. LINE保険
  5. LINEスコア(信用スコア)
  6. LINEポケットマネー(ローン)

さらにLINEはみずほ銀行と共同出資で新銀行を設立の計画も持っています。

コミュニケーションツールとして、既にユーザーの日常生活に入り込んでいるLINE。今後は、日本の金融サービス業界の活性化においても大きな役割を果たしていくことになりそうです。

 

(5)銀行によるショッピング決済への再参入が本格化

お金の取扱を本業とする銀行ですが、消費者の日々の買い物シーンでのお金の受け渡しにおいては存在感がありません。当たり前と思うかもしれませんが、実はこれは日本の銀行の特殊性の一つなのです。

諸外国では、買い物でのカード決済は銀行業務の一環です。つまり銀行が発行したカードで買い物をしているわけですが、日本では事業が異なります。銀行業界とは別にカード業界が存在しており、買い物に使うクレジットカード決済はカード会社が担っているのです。(これはカード決済が日本上陸した当時の銀行規制のあり方に端を発していて、それから数十年後の現在にもそれが続いています。)

日本経済が右肩上がりだった時代、銀行が高収益だった時代は特に問題はありませんでしたが、いまは銀行にとって冬の時代。そこで重要度を増しているのがショッピング決済。決済手数料収入という金銭的メリットだけでなく、「顧客の日常を知ることで、顧客の金融ニーズにあったクロスセルに繋げる」というリテールバンキング戦略の根幹にも関わる動きです。

とはいえ、銀行業界はJ-Debitで一度はショッピング決済に参入しています。が、J-Debitはそれほと普及するには至りませんでした。

しかしフィンテック時代の到来とともに、銀行によるショッピング決済の再参入の動きが目立っています。まずは銀行口座直結型決済の拡大。QRコード決済の「Origami Pay」と提携し、店頭での決済時に利用金額を直接口座から引き落とせる銀行が増えています。クレジットカード等を経由せずに、銀行口座がショッピング決済に直接利用されるという構図は新しく、消費者にとっても銀行との日常的な接点になりえます。

さらにGMOペイメントゲートウェイの「銀行Pay」を利用してQRコード決済を提供する銀行が増えました。横浜銀行の「はまPay」は2017年からありましたが、2018年には福岡銀行の「Yoka!Pay(よかペイ)」が始まり、さらにりそな銀行・ゆうちょ銀行なども銀行Pay提携によるQRコード決済参入を表明しました。さらにメガバンク3行は統一QRコード決済規格「バンクペイ(仮)」で合意しましたが、これは地銀などにも参加を促していくとのことです。

さらに踏み込んだのがりそな銀行。8月に発表した「りそなキャッシュレスプラットフォーム」では、大手銀行として初めて、加盟店向けサービスを直接提供してゆく方針を明らかにしました。

また、ショッピングの場での銀行口座活用という点では、店舗レジにおいて銀行キャッシュカードで現金を引き出す「キャッシュアウト」も2018年4月から始まりました。「ローソン銀行設立発表」も、ショッピングの場でより便利に使える銀行への流れの中で理解することもできそうです。

 

(6)本人確認の制度改正 ネット完結が可能に

金融サービス提供時に必要な本人確認。マネーロンダリング防止のためのグローバルでの取り組みの一つであり、とても重要なものであることは言うまでもありませんが、フィンテックサービス提供のハードルの一つだったことも事実です。

従来の制度は「本人確認書類の提示」や「本人限定郵便の送付」などが必要で、どうしてもネット完結させることができず、事業コスト等の面からフィンテック促進のハードルともなっていました。

それが11月、本人確認制度を管轄する警察庁から、本人確認をネット完結可能にする改正が発表されました。スマホのカメラ機能等を用いることで、完全にペーパーレスで本人確認を完結させることが可能です。

フィンテック環境整備が一段と進んだことを示すニュースでした。

 

(7)店舗の現金レス化と事前決済が広がり始める

フィンテックは金融サービスの革新ですが、フィンテックと他分野の技術を連携させることで店舗のあり方と買い物のあり方にも変化が起こり始めています。昨年以前から米国の「Amazon Go」や中国の無人コンビニなど海外の動き、ロイヤルホールディングスの現金レス店舗である「Gathering Table Pantry」など国内の動きもありました。こういった動きには国内の決済事業者・小売事業者も関心を持って注視していたところです。

そして2018年にはモスバーガー、KFC、マクドナルドなどファストフード各社が事前決済サービスの導入/実証実験を行いました。複数の飲食店を対象とするものとしては「Putmenu」や「O:der」といったサービスも出てきています。

現金レス化のニュースでは九州の新生堂薬局がキャッシュレス店舗を開店したというものや、「天丼てんや」のキャッシュレス店舗開業、などがあります。

また、新しい買い物体験の模索という意味では、顧客自身によるセルフ決済の「ローソンスマホペイ」、トライアルカンパニーの夜間無人店舗といったニュースも興味深い事例です。

 

(8)スタートアップのM&A増

2018年のフィンテック業界では

といったM&A案件がありました。

特にマネーフォワードの案件は、スタートアップ同士のM&Aであり、フィンテック以外の業界でもこのタイプのM&Aは増えています。事業の出口として、成長戦略としてM&Aを活用できるようになってきていることは、日本のスタートアップ事業環境のさらなる成熟を示すものと言えます。

 

(9)新興サービスでの流出事件多発

2018年はフィンテックサービス開発における情報セキュリティの重要性を考えさせられる年でもありました。

大切なお金を扱うフィンテックにおいては、顧客資産の保護は最優先であることは言うまでもありません。情報セキュリティを確保しながら、サービス品質で競争することでフィンテックがさらに発展するよう願っています。

 

(10)楽天カードが国内最大のクレジットカードに

フィンテックの一つの側面は、異業種プレイヤーによる金融業界の活性化ですが、中でも決済サービスは新規参入が活発な領域です。

2005年に発行開始した楽天カードも異業種参入組の1社。楽天経済圏でのポイント還元施策で急拡大してきました。そしてついに2017年には取扱高が6兆円を突破、国内最大のクレジットカードとなりました。(2018年1月のプレスリリース

伝統あるカード会社を抑えて1位となった楽天カード。カード利用とキャッシングで稼ぐという従来のクレジットカード事業の構造を超越し、楽天経済圏拡大というグループ戦略に位置づけられたカードが国内トップとなったことは、異業種による業界変革の進行を端的に表すものと言えます。

今後もフィンテックによる市場構造変革は続いてきます。事業者にとっては苦しい思いをするところもあるでしょうが、最終的には消費者の利便性と業界活性化、ひいては日本経済の活性化につながる動きです。今後も競争を通じてよりよいサービスが生れていくことを願います。

 

(番外)インフキュリオンが「海外キャッシュレス旅行」を決行

「決済×テクノロジーを軸に社会に新しい価値を生み出す事業開発カンパニー」である我々インフキュリオン。決済に関して圧倒的な知見を持っていると自負していますが、世界のさまざまな国ではさまざまな決済サービスが使われています。

日本を飛び出し、世界の決済を見てみたい。そんな思いからインフキュリオンは2018年9月、「海外キャッシュレス旅行」を決行しました。世界11カ国を訪れ、それぞれの国のキャッシュレス事情を直接見てきたのは、2019年度入社予定の内定者インターン。いろんな意味で、わたしたちにとって大ニュースです。

旅行中の日々のブログを基に書き起こしたレポートは、当サイトの記事として公開しています。ぜひご一読ください!

  1. キャッシュレス世界旅行して分かった  アジアで広がり続けるQRコード決済の実態
  2. 先進国と新興国で実感 NFC決済とQRコード決済の潮流
  3. 中東のキャッシュレスはここまできているinイスラエル&トルコ
  4. 「Swish」決済はまだまだ キャッシュレス先進国 スウェーデンの実態
  5. IT大国エストニアが魅せる1歩進んだ電子サービス
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(インフキュリオン メディア&ラボ事業部 森岡剛)

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