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キャッシュレス社会

進化するリアル店舗の決済UX

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2018年7月の「キャッシュレス推進協議会」設立で、日本のキャッシュレス化は勢いをましていく感があります。しかし決済は毎日の消費行動の根幹。現時点でキャッシュレス化していない消費者をキャッシュレスに転換していくのは簡単ではありません。いちばんいいのは、キャッシュレス決済を用いた「よりよい買い物体験」を実現すること。楽しく買い物する中で自然にキャッシュレス決済を利用するようになれば、消費者も加盟店もハッピーです。

もちろん、これは理想論。新たなUXは机上検討ではなく試行錯誤から生れるものです。そこで今回は、新しい決済UXの創出への取組みの事例を幾つか紹介しようと思います。

dr_OX/Bigstock.com

 

関連情報:

店舗内の決済UXの7パターン

現時点で一般的なものから実証実験レベルのものまで様々ですが、それらを7つのパターンにまとめたので解説します。

1.POSレジ

現時点でもっとも一般的なUXです。お客さん(以下、客)は店内を回遊しながら買いたい商品をカゴなどに入れます。POSレジに持っていくと、店員がバーコードスキャンで商品登録します(以下、スキャンする)。客は支払のため現金やカードなどを店員に渡しますが、実際の決済オペレーションは店員が行います。

2.セルフレジ

POSレジよりも新しいですが珍しくはないです。客が自分で商品スキャンし、決済オペレーションも行います。混雑緩和のために導入されることが多く、実際通常のPOSレジよりも空いていることが多いようです。しかし慣れない操作で逆に時間がかかってしまうと、客にとってストレスになる場合もあります。

3.セミセルフレジ

比較的最近現れたパターンです。商品スキャンは客自身よりも熟練した店員が、決済オペレーションは単純なので客自身が、という役割分担の思想に基づいています。商品スキャンと精算機が分離しています。

4.レジレス+スキャンレス

最近注目を浴びている「Amazon Go」がこのパターンに当てはまります。商品スキャンという作業自体が存在せず、決済のためのレジもありません。客は入店し、商品をピックアップし、そのまま退店します。

未来的なUXですが、技術のかたまりで実現されています。どんどん出店していくという状態には到達していません。今後の発展には大いに期待しています。

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5.セルフスキャン+アプリ決済

「セルフスキャン」とは、客が店内回遊中に自分で商品スキャンするということです。客自身のスマホアプリのバーコードリーダーを使うケースと、店頭にある専用スキャナを貸し出しているケースの両方があります。

米国Walmartが一部の店舗で実証実験していた「Mobile Express Scan & Go」がこのパターンに該当します。スマホアプリでセルフスキャンすることもできますし、店頭に置いてある専用スキャナを使うこともできますが、サービスとしてはスマホアプリがメイン。しかしアプリインストールが必須だと初回利用のハードルが高すぎるため、店頭の専用スキャナを使って体験してもらおうという設計意図です。

セルフスキャンというと客にとっては作業が増えるようですが、客へのメリットもあります。まず、買い物カゴの中に幾ら分の商品が入っているのか常時把握できること。予算に合わせた買い物をしやすくなります。また、割引クーポンなどがある商品についてはアプリやスキャナーから通知して自動適用することもできます。セルフスキャンのほうがお得、ということもありそうです。

このパターンでは、決済処理はアプリ内で行います。Walmartの場合もそうですが、決済完了するとバーコードが表示されるのが特徴。店舗出口の店員にそれを読み取り確認してもらって退店するという流れです。

日本でもこのパターンでの決済UXが実証実験されていました。ローソンの「スマホペイ」です。既に実験期間は終了しているようですが、報道などによると客の反応も店の反応も上々だった模様です。

なお、Walmartの「Mobile Express Scan & Go」も実証という扱いでした。2018年当初は100店舗以上に対象を拡大する予定でしたが、2018年4月Walmartはこのサービスの停止を発表します。理由は「利用が伸びなかった」。新たなUXの定着には試行錯誤が必要ですが、これで「セルフスキャン+アプリ決済」がダメになるわけではありません。まず先陣を切って道を拓こうとしたWalmartには敬意を表します。

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6.セルフスキャン+レジ決済

アプリ決済でレジを完全にバイパスするというのは、既存店の導線にそぐわない可能性もありますし、決済用アプリインストールが必須になるなどの課題もあります。

そこで考えられたのがこのパターン。アプリや専用スキャナーでセルフスキャンするのは先ほどのパターンと変わりませんが、決済オペレーションが違います。客はセルフレジに行き、レジ端末についているバーコード(もしくはQRコード)を読み取ります。するとアプリや専用スキャナに保存されている商品情報がレジ端末に転送され、そこからは通常のセルフレジの決済オペレーションに移行するのです。

これは既に実用化されていて、英国の大手スーパーTescoの「Scan as you Shop」、米国Krogerの「Scan, Bag, Go」が該当します。それぞれ今年中には数百店舗に展開する計画となっています。

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7.店員回遊型決済

「セルフスキャン+アプリ決済」パターンの決済UXは停止させたWalmartですが、同時に別の新しい決済UXを投入しました。「Check Out With Me」という名称です。

これは要するに、モバイル決済端末を持った店員が、商品陳列場所で決済してくれるというもの。客が商品をレジに持っていくのではなく、決済機能が客のところに来てくれる、というとわかりやすいでしょうか。

Walmartが念頭に置いているのは、屋外に陳列されることの多いガーデニング商品など。重くてサイズも大きい商品が多いカテゴリーです。

通常ですと、そのような商品も店内のレジに持っていって決済し、そこからまた店外に駐車している客の車に持っていく必要がありました。無駄な移動が購買のフリクションになっていたとも考えられます。

「Check Out With Me」ならが、商品陳列場所で決済してもらい、あとはそれを車に運ぶだけです。

シンプルなアイデアですが、「かゆいところに手が届く」感じがしますね。

また、POSレジを既に備えている店舗に、さらにモバイル決済端末を持った店員を回遊させるというのは面白い発想です。同じ店舗内にも複数の決済UXを並存させて、その場その場で最適なものを選択できる、というのは客にも優しい「気持ちよい買い物体験」につながるように思います。

参考情報:

 

(インフキュリオン シンクタンク事業部 森岡剛)

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