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「インフキュリオン決済動向調査2016」に見るデビットとプリペイドの利用拡大

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studiog/Bigstock.com

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前回のインサイト記事で述べましたとおり、日本のキャッシュレス決済の拡大は続いていますが、その水準は諸外国に比べるとかなり低いままです。カード自体の普及はかなりの水準に達しているにも関わらず、使われていないという状況を変えていくには、消費者の行動をよりよく理解し、利便性の高いサービスで訴求していく必要があります。

そのような問題意識の下で、インフキュリオンは、全国の一般消費者を対象とする独自の「決済動向調査」を2015年から実施しています。今回は「インフキュリオン決済動向調査2016」の概要を紹介し、そこから得られた様々な示唆のうち、日本の消費者のペイメントカード利用動向について紹介しようと思います。

前回のインサイト記事は以下です:

インフキュリオン決済動向調査の特徴

決済に関する統計データは様々なものがありますが、インフキュリオンが独自の調査が必要と判断したのには理由があります。決済は利用者の生活スタイルに根ざした消費行動の一環として起こるもの。ですので、「どんな人がどのような決済行動を取っているか」と理解するには、対象者を性・年齢のセグメントに分類するのでは不十分。勤労状況や金融資産状況、家庭内での立場を踏まえた上で、消費スタイルが似ていると思われるセグメントに分類して決済行動の特徴と見る必要があります。

これを踏まえて「インフキュリオン決済動向調査」(以下、本調査)は、以下の特徴を持った設計となっています:

  1. 「勤労状況」・「世帯年収」・「生計上の立場」の観点から日本の消費者を8つのセグメントに分類
  2. 決済行動に限らず、金融資産状況や金融サービス利用状況、休日の過ごし方など幅広い分野に関して質問することで各セグメントの生活スタイルと決済行動の特徴の分析が可能

以下の図は、本調査におけるセグメントの定義を示しています。

インフキュリオン決済動向調査2016:調査対象セグメント

インフキュリオン決済動向調査2016:調査対象セグメント

全回答者をまず、勤労状況に応じて「学生」「年金受給者」「それ以外」に分類します。「学生」「年金受給者」はそれぞれがセグメントとなります。そして「それ以外」を、世帯年収と生計上の立場に応じて6つのセグメントに分解しています。

世帯年収は、400万円と800万円を閾値として、高・中・低の3つに分けています。生計上の立場は、扶養者と被扶養者(独身者は扶養者に含まれる)。これで、「世帯年収高&扶養者」から「世帯年収低&被扶養者」までの6セグメントが出来上がります。

調査結果を分析したところ、「被扶養者」の大多数(84%)が女性だったため、わかりやすいセグメント名として「専業主婦」としています。これに応じて、「扶養者」は「稼ぎ手」と呼ぶようにしています。

以上が本調査におけるセグメント分けの特徴です。次に、調査方法を説明します。

インフキュリオン決済動向調査2016:調査方法

インフキュリオン決済動向調査2016:調査方法

上図で示すとおり、本調査は

  • 20000人を対象とする「全体調査」
  • 824人(1セグメントあたり103人)を対象とする「詳細調査」

の2段階構成となっています。全体調査は主要ペイメントカードの保有・利用状況を目的としています。セグメント毎の生活行動・金融行動・決済行動の調査は「詳細調査」で行います。

「インフキュリオン決済動向調査2016」は2016年3月に実施しました。これは2015年3月の「インフキュリオン決済動向調査2015」に続く2度目の調査です。定点観測するため、ほとんどの質問は同じです。本稿では、ここかわかった日本のキャッシュレス決済利用動向について紹介しようと思います。

デビットとプリペイドの拡大

2015年~2016年ペイメントカード利用の推移 (インフキュリオン決済動向調査2016)

2015年~2016年ペイメントカード利用の推移 (インフキュリオン決済動向調査2016) ※2016年9月1日画像更新

上の図は、20000人を対象とする全体調査におけるペイメントカード利用の調査結果を2015年と2016年で比較してみたものです。全体の75%以上がクレジットカードを利用、45%程度が電子マネーを利用している状況に変化はなく、日本で最も利用されているペイメントカードとして安定的な地位を誇ります。

近年、発行が相次いでいる国際ブランドデビットカード/プリペイドカードは、「利用している」と回答した人はまだ少数に留まっており、まだ日本の決済シーンに大きなインパクトを与えるには至っていません。

しかし、2015年から2016年の推移を見ると、興味深いことがわかります。クレジットカードと電子マネーの利用はほぼ横ばいなのに対し、デビットカード利用は1.6倍、プリペイドカード利用は1.5倍に拡大しているのです。

与信ではないため、従来のクレジットカード利用層よりも幅広い層に持ってもらえることを特徴とするデビットカードとプリペイドカード。発行のニュースは相次いでいますが、その利用に関する統計データはあまり公表されていません。本調査に見られるデビットカードとプリペイドカードの拡大は、これらによる新規ユーザ獲得が現実であり、今後のキャッシュレス決済拡大の推進力の一つとして期待できることを示しています。

このように、他の統計データでは得られない様々な示唆を与えることができる「インフキュリオン決済動向調査」。コンサルティング事業での活用だけでなく、インフキュリオン・インサイトでも一部公表することで、日本の決済業界に貢献していきたいと考えています。

関連インサイト:

(インフキュリオン シンクタンク部門 森岡剛)

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決済・金融領域を中心として、自ら独創的なソリューションの開発・運営を行うことにより、多くの企業や一般消費者が革新的なサービスを享受することを目指している企業です。
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