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スマートコントラクトとブロックチェーン

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Palto/Bigstock.com

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ビットコインを支える基盤として注目を集めているブロックチェーン。暗号通貨の実現はその応用の一つに過ぎないというこの革新的技術ですが、その応用領域として有力なのが「スマートコントラクト」。いろんな意味で使われる場面のある用語ですが、2016年3月に正式版に移行したEthereumにおいては「プログラム型契約」という位置づけです。

Ethereumを用いたスマートコントラクトの応用事例も出始めています。例えば米国ニューヨークのブルックリンにおけるLO3 Energyの取組み。マイクログリッドと組み合わせた実証事業が行われています。太陽光発電など、再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社等の仲介無しに個人間で売買することができるというもの。「ビットコインの所有権」を管理するビットコインのブロックチェーンを超えて、遠隔者同士の売買契約を自動化するというスマートコントラクトの力の一端を示しています。

また、β版に移行したAugurというものもあります。同社サイトに「Decentralized Prediction Market」とあります。ちょっと過激な表現かもしれませんが、これは「誰もが賭けの胴元になれる」、というものです。将来の事象に関してその結果を予想し、実際の結果に応じて掛け金を配分するというものです。先物商品など多くの金融商品もようするに同じような形態の契約となっていますが、Augurの特長はEthereumのスマートコントラクトを用いることで、契約の執行を完全自動化し、仲介者を排除することで劇的な低コスト化を実現できるということでしょう。

Ethererumの参考情報:

さてブロックチェーンの理解の浸透を待たずにどんどん進んでいく技術革新。よくわからないまま言葉に踊らされているという不安感のある方も多いのではないでしょうか。本稿では、ブロックチェーンとスマートコントラクトの関係を整理してみようと思います。これらの革新的技術に関する理解の浸透の一助になれば幸いです。

スマートコントラクトとブロックチェーン

スマートコントラクトとブロックチェーン

中央管理台帳

上図に示したとおり、従来は中央管理台帳が、契約の執行や取引が支えられています。これは中央管理者が持つ台帳こそが「正」であるという制度で、中央管理者のみを信頼すれば、互いに信頼関係の無いプレイヤー間で取引が可能になるという大きな利点を持っています。反面、中央管理者による「信頼の創出」に莫大なコストがかかります。その一部は手数料というかたちで利用者に転嫁されたり、行政による中央管理者への監督制度などに税金が投入されたりしているのです。

中央管理台帳の例としては、各種金融サービスの裏にある取引台帳や、不動産などに関する所有権登記簿制度などがあります。

分散台帳とブロックチェーン

ビットコインとともに登場したのが「分散台帳」です。これは、中央管理者が不在なため、その維持コストが無いという大きな特長を持っています。しかしそんなものは近年までは机上の空論でした。なぜならば、分散台帳とは以下のような無茶な性質を持った台帳だからです:

  1. 中央管理者はいない。
  2. 各参加者が、正台帳を保有している。
  3. 各参加者は、自分の正台帳を参照すれば、過去の取引を確認できる。
  4. 新たな取引が行われると、その当事者が、他の参加者にその情報を伝える。各参加者がそれを自分の台帳に書き込むことで、全プレイヤーの台帳の内容が一致する。

実はこれは、取引情報の伝達を担うネットワークにタイムラグが無く、全参加者が正直者である(決して嘘をつかない)ならば実現可能です。しかし現実には取引情報の伝達にはタイムラグがありますし、悪意をもって他の参加者を騙そうとするプレイヤーも存在します。

その負の影響を、公開鍵暗号技術と「proof of work」の仕組みで遮断したのが、ビットコインのブロックチェーンです。以後、最近では「分散台帳を実現する手段」としてのブロックチェーンに大きな関心が集まってきました。

分散台帳を用いると、不特定多数のプレイヤー間の所有権管理コストが劇的に下落します。そのキラーアプリがビットコインだった、と言えるでしょう。現時点ではビットコインのような仮想通貨以外にも、以下のような領域で分散台帳の応用が進められています:

  • 国際送金
  • 非公開株取引
  • 不動産登記
  • シンジケートローン
  • 貿易金融
  • トレーサビリティ(ダイヤモンド、サプライチェーンなど)

 スマートコントラクト

Ethereumは「分散台帳」の考えをさらに進めたもので、分散台帳による所有権管理に、契約執行機能を搭載したもの、と言えるでしょう。ビットコインでは基本的に、「誰が誰にビットコインを渡したか」を台帳記入しているのに対し、Ethereumではさらに「条件成立時に取引を実行するという契約」を記述したプログラムを台帳記入することもできます。これにより、改ざんが実質不可能で、条件成立時に自動実行されるという新しい「契約」が実現できるようになりました。

このような「プログラム型契約」であるスマートコントラクト。仲介者不要な契約執行を実現することで、新たな産業を創出するのではないかとの期待が集まっています。その適用アイデアとしては以下のようなものがあります:

  • 予想市場(上述のAugur)
  • 先物取引
  • 遺言執行
  • 楽曲配信
  • スマートロック(Slock社
  • PtoP電力市場(上述のLO3)
  • IoTによる自動契約
  • 無人タクシー

まだ実証事業が始まったばかりのEthereumとスマートコントラクトですが、IoTとも相性がよく、今後も大いに盛り上がっていくと思われます。法制度との整合など多くの課題が出てくることでしょうが、社会の革新にどのようにつながってゆくのか、今後の動向を注視します。

関連インサイト:

(インフキュリオン シンクタンク部門 森岡剛)

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