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FinTechのドライバーとしてのマイナンバー制度

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Kamaga/Bigstock.com

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2015年10月から通知が始まった個人番号(以下、マイナンバー)。1月からは個人番号カードの交付も始まっており、日本国内に住民票を有する全員を対象とする新たな個人IDとしての第一歩を既に踏み出しています。

新たなIDである「マイナンバー」に世の中の関心が集中している感がありますが、マイナンバー制度の実態は「マイナンバーそのもの」、「個人番号カード」、「マイナポータル」、という3つの要素からなる壮大なITインフラ整備事業。「こくみんいとって利便性の高い社会」、「国民が自己情報をコントロールできる社会」の実現に向けた布石です。

出所:「マイナンバー 社会保障・税番号制度 概要資料 平成27年11月版」(内閣官房社会保障改革担当室、内閣府大臣官房番号制度担当室)

出所:「マイナンバー 社会保障・税番号制度 概要資料 平成27年11月版」(内閣官房社会保障改革担当室、内閣府大臣官房番号制度担当室)

マイナンバーそのものに関しては、プライバシーや情報セキュリティに関する一般消費者が抱くであろう不安感を見越して、利用目的を税・社会保障・災害対策に限定しており、マイナンバーの取得や提供に関しては法律で厳しい制限が課せられているのはご存じのとおりでしょう。ですので、少なくとも中期的には、マイナンバー制度の民間活用、特にFinTechへのインパクトは、「個人番号カード」と「マイナポータル」から来ることになります。

個人番号カードと公的個人認証

申請すれば交付される個人番号カード。ICチップが搭載されており、公的個人認証に使える電子証明書が2つ格納されています。

公的個人認証とは、公開鍵暗号法を使って、ネットワーク上での個人の認証を実現する仕組み。これ自体は新しいものではなく、2001年に始まった住基カードにも組み込まれています。ただ、住基カードは用途が限定されており、発行実績も300万枚に満たないなど、普及したとはとうてい言えない状況です。

今回の個人番号カードでは、民間での利用拡大に向け、オンライン身元確認・住所変更の有無チェック・IDパスワードによるログイン認証など幅広い用途を想定した機能が搭載されています。

電子証明書としてはまず、「署名用電子証明書」があります。これは住基カードに格納されていたものと同様で、氏名・住所・生年月日・性別の「基本4情報」を含んだ電子証明書で、厳密な本人確認に使用することができます。

もう一つは、「利用者証明用電子証明書」。こちらには個人情報は含まれておらず、利用者を認証する用途に使えます。例えば初回ログインの認証は「署名用電子証明書」で厳密にやった後にログインIDの設定等を行い、以降は利用者証明でログイン可能にする、といった使い方が可能です。

住基カードと違って、国内の誰もが申請すれば入手できる個人番号カード。公的個人認証手段の保有が一気に進むと期待されています。犯罪収益移転防止法上も公的個人認証による本人確認は認められていますし、それ以外にも利用者証明用電子証明と組み合わせた、より便利なユースケースが今後表れる可能性は大きいと見ています。

ただ、現時点での難点は、公的個人認証の利用には接触または非接触のICカードリーダーでの読取り処理が必要なこと。これではネットで完結する口座開設はこのままでは実現困難です。

政府はその辺りも考慮しています。2015年6月に日本経済再生本部から公表された「日本再興戦略 改訂2015」。そこには、「世界最高水準のIT社会の実現」に向けた施策の一つにマイナンバー制度が位置付けられているのですが、「スマートフォンでの読取りによる公的個人認証」と「利用者証明機能のスマートフォンへのダウンロード」が明記されています。前者は、スマートフォンで個人番号カードを読取って公的個人認証を利用できるようにするという方針で、何と2017年中に実現予定とのこと。後者はスマートフォンに電子証明書を格納することで、スマートフォン自体がカードとして機能するようになるということで、こちらは2019年内の実現予定です。

スマートフォンと公的個人認証の組合せ。本人確認や認証など、決済・金融・FinTechを実現する基盤のレベルで、国家レベルのインフラ整備が進んでいます。

マイナポータル

「マイナポータル」については、あまり聞いたことのない方が多いかもしれません。これは、いわゆる「マイナンバー法」を根拠とする「情報提供等記録開示システム」のことで、2015年4月に「マイナポータル」と命名されました。

出所:「マイナンバー 社会保障・税番号制度 概要資料 平成27年11月版」(内閣官房社会保障改革担当室、内閣府大臣官房番号制度担当室)

出所:「マイナンバー 社会保障・税番号制度 概要資料 平成27年11月版」(内閣官房社会保障改革担当室、内閣府大臣官房番号制度担当室)

上に挙げた政府公表資料には、マイナポータルの機能として①から⑥まで6つが示されています。①と②はマイナンバー法に定められた、行政による個人情報の保有や利用の状況を個人自身が確認できる機能、③は予防接種のお知らせなど行政からの通知を受け取ることができる機能です。

決済・金融・FinTechでインパクトがあるのは、「電子私書箱」の機能でしょう。もともとマイナポータルは、行政からの通知を電子的に受け取ることができるという、ペーパーレス化のインフラ。センシティブ情報を扱う行政通知にも使えるこの機能を、民間の重要書類の送信にも使えるようにするというのが政府の方針です。

ここで考えられるのは、収入証明書や源泉徴収票、生命保険料控除証明書など、個人のお金や金融状況に関する重要書類の授受。電子メールでは送達が確認できないため紙書類のやりとりが続いていますが、マイナポータルを介することでペーパーレス化が一気に進められることになります。

民間活用を期待する政府、FinTechはそれに応えるか

このように、日本政府が放つ、IT基盤としてのマイナンバー制度。マイナポータルはFinTech領域において今後大きなインパクトを持つと考えられます。

ただ、政府としては、全てを丸抱えする気はないようで、民間が接続して自社サービスに活用できるような共通インフラとして構想しています。例えば経済産業省。2015年9月に公表した「マイナンバー制度の民間活用について」という資料において、個人番号カードやマイナポータルに関する民間活用案を出して、事業者による検討を促しています。

出所:「マイナンバー制度の民間活用について 平成27年9月」(経済産業省 情報プロジェクト室)

出所:「マイナンバー制度の民間活用について 平成27年9月」(経済産業省 情報プロジェクト室)

新サービス創生の基盤を整備し、民間の動きを期待している政府。今後は決済・金融・FinTechの事業者側がそれを活用し、どのような革新的なサービスを生み出すのかが注目です。

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(インフキュリオン シンクタンク部門 森岡剛)

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