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2015年を振り返る:フィンテックとブロックチェーン

Oakozhan/Bigstock.com

様々な動きのあった2015年。本稿ではこの一年で特に印象的だった動きとして、「政府と業界のFinTech推進態勢」と「ブロックチェーンへの関心の高まり」について総括したいと思います。

政府と業界のFinTech推進態勢

2014年は政府がキャッシュレス決済の推進の立場を明確にし、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた具体方策を公表したという年でした。

そこへいくと2015年は、政府がFinTech推進を明確に打ち出した年と言えるでしょう。主な動きとしては以下がありました。

  1. 金融庁
    • 9月、平成27事務年度行政方針に「IT技術の進展による金融業・市場の変革への戦略的な対応」を重点施策として明記。「FinTechへの対応」の方針として、海外事例など動向の先行把握や、FinTechプレイヤーとの積極的な意見交換などを列挙。
    • 12月、金融審議会 決済業務等の高度化に関するワーキング・グループは報告案を公開。FinTechによる世界規模での構造変化を背景に、銀行法を中心に業務毎の枠組みを定める現行法制度に対する問題を提起し、横断的な法制度の必要性を指摘。決済サービスと融資業務等の融合や、消費者と金融機関の間に入る「中間的業者」の出現などのトレンドへの対応の必要性を明記。
    • 12月、金融審議会 金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループも報告案を公開。新規参入事業者による、銀行を活用したビジネスモデルに金融機関が対応してゆけるようにするための規制緩和の方向性を示す。
    • 12月、FinTech事業に関し法制度との整合などの相談に対応するための「フィンテック相談窓口」を設置。FinTechのスピード感を守りつつ金融監督制度どの整合を図っていくことで、英国やシンガポールなどのFinTech育成政策に伍してゆく姿勢を鮮明に打ち出した。(日本経済新聞の報道はこちら)
  2. 経済産業省
  3. 自民党

業界のほうでは、10月のFinTech協会設立のように、FinTechベンチャーが集まり業界として動いてゆく動きも出ています。このように、2015年は、政府・業界が、FinTechによって進行する世界的な金融業界の構造変化の波をうまく捉えて、日本の金融業界の活性化に繋げようという意思を持って動き始めた年だったと言えるでしょう。

ブロックチェーンへの関心の高まり

ビットコインの基盤技術として、当初はビットコインの陰に隠れていた感のあるブロックチェーン。2015年は、「分散台帳」の実現技術としてのブロックチェーンへの関心が大いに高まった年でもありました。

従来は「台帳」というものは中央管理されているのが当たり前で、「分散台帳(distributed ledger)」と言われてもピンとこない方も多いでしょう。分散台帳とは、中央管理者が存在せず、参加者各自が自分で正の台帳を管理するという不思議なシステム。今まではそれを実現する技術が無く、我々の思う「台帳」は「中央管理型台帳」であり続けたわけですが、ブロックチェーンという「分散トランザクション処理エンジン」(Fortune誌の記事の語)の登場によってはじめて分散台帳が世に出ることになりました。

分散台帳を用いたキラーアプリとして普及したビットコイン。日本ではビットコイン業者の破たんに起因する一連のニュースでネガティブなイメージを持つ人も多いようですが、現在ではむしろビットコインを可能にしたブロックチェーンの他分野での応用に関心が集まっています。

ホンジュラスでは土地の登記にブロックチェーンを利用する取組みがありますし、米ナスダックは非上場株の取引をブロックチェーンで行う「Nasdaq Linq」を発表。他にも、ダイヤモンドの鑑定書の管理や音楽配信をブロクチェーンで効率化するベンチャーも世界では現れています。

特に目立ったのは、世界の大手金融機関が参加しブロックチェーンの活用や標準化を検討する枠組みであるDistributed Ledger Initiativeの結成。日本のMUFG、みずほFG、三井住友銀行、野村ホールディングスを含む42事業者が参加する取組みとなっています。

さらに12月には非営利団体であるLinux Foundationが、ブロックチェーンによる分散台帳の発展と普及を進めるOpen Ledger Projectを発足、上記のDistributed Ledger InitiativeをとりまとめるR3を含め、日本からもMUFG、富士通が参加しています。Open Ledger Projectは、オープンソースによる技術の共有と標準化でイノベーションを促進することが目的。金融に領域を限定していませんが、R3も参加することで、大手金融機関での活用における要件なども取り込む体制になっています。

英国の高級経済誌The Economistも10月にブロックチェーン特集号を出すなど、既にメインストリーム入りしたブロックチェーン。2015年は実証事業が目白押しという印象でしたが、2016年からは実サービスによるイノベーション実現を進める段階に入ることでしょう。

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