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米国モバイル決済動向:チェースペイとMCXのCurrentC

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ISerg/Bigstock.com

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2015年10月26日、米国ラスベガスで開催されている決済と金融の一大イベントであるMoney20/20において、JPMorgan Chase(以下チェース銀行)が新たなモバイル決済サービス「Chase Pay」を発表しました。Apple Pay・Samsung Pay・Android Payで既に盛り上がりを見せている米国モバイル決済市場への参入の表明となります。

米国モバイル決済サービス

このインサイトでもたびたび取り上げている米国モバイル決済サービス。Apple Payやトークナイゼーション関連の記事は、本インサイトにおいてももっともアクセス数が多く、日本の業界関係者の高い関心が窺えます。本稿は現時点の報道をベースにChase Payの概要を紹介しようと思います。

Apple社と既にApple Payで提携しているチェース銀行。なんと今回のChase Payは、Apple Payと競合関係にあるMCXとの提携によるものだという点が驚きです。

MCXは、ウォルマート社、ターゲット社など大手が加盟する小売企業の団体で、メンバー全体で10万店舗以上、年間売上は1兆ドルを超すという巨人です。カード決済の上顧客を多く含むMCXですが、決済手数料に関してカード業界とは折り合いが悪く、訴訟などあらゆる手段を行使してきました。そのMCXがカード業界への対抗策として放つのが、QRコードベースのモバイル決済サービスであるCurrentC。約3年の開発期間を経て2015年にリリースされる予定でしたが、どうも2016年にずれこみそうだというのは本ブログでも触れたことがあります。

MCXの規約では、加盟企業はCurrentC以外のモバイル決済を導入できないことになっており、Apple Payには基本的に未対応。これは、非接触EMV決済(いわゆるNFC決済)に対応しないことでApple Payを使えない状態にしている企業がほとんどのようです。(注:Samsung PayはMSTがあるので使用停止にするのは難しく、ユーザーが使おうと思えば使えてしまう状態にあると思われます。)

MCXが創り出している、年間1兆ドル規模のモバイル決済空白地帯。MCXとの提携によってその市場にも入り込もうというのがチェース銀行の戦略のようです。カード決済手数料を忌み嫌うMCXですので、チェース銀行もChase Payの手数料はかなり下げている模様。薄利ながらも規模を負うことで採算を見込んでいるようです。

Chase Payはチェース銀行ユーザーが対象となりますが、同行は9,400万人の顧客を持つと言われる超大手。巨大イシュアでもあり、個人顧客のクレジットカードとデビットカードの合計取扱高は年間6,000億ドル近くあります。非接触EMV、トークナイゼーション、指紋認証といった最新技術を詰め込んだApple Pay・Samsung Pay・Android Payに比べるといまいち精彩の欠ける印象のCurrentCですが、9,400万顧客を事前登録してしまうChase Payという力強い味方を得た形です。

Chase Payの開始は2016年中頃とのこと。CurrentCアプリとChase Payアプリの関係など詳細はこれから明らかになっていくと思われます。

カード決済インフラに乗ったApple Pay・Samsung Pay・Android Payと異なり、米国ACHベースの独自路線を進むCurrentCとChase Pay。日本上陸の可能性が十分にある前者グループに対して、日本市場への影響は現時点ではほとんどないと見られる後者グループ。しかし世界に影響を与える米国市場における新サービスは、日本におけるサービスのありかたについても示唆を与えるものと考えられます。

非接触モバイル決済で大きな動きを見せ続ける米国市場。今後もその動向を紹介していきます。

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(インフキュリオン シンクタンク部門 森岡剛)

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