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カード決済のモバイル化を進めるEMVCoとPCI SSCの動き

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中国発の決済サービスと言えばアリペイとウィーチャットペイメント。両者とも、スマートフォンなどモバイル端末と汎用インターネット接続、そしてQRコードの組み合わせが功を奏して爆発的に拡大しました。いまや、カード決済インフラをバイパスした新たな決済方式として世界的にも注目を浴びています。

nazarkru/Bigstock.com

それに対して、高セキュリティなインフラを構築・運用してきたカード業界も、手をこまねいてみているわけではありません。国際ブランドが主導するカード業界団体であるEMVCoとPCI SSCがそれぞれ、決済のモバイル化を加速させる施策を打ち出しています。今回はその2つの動きについて紹介します。

EMVCoとQRコード決済

American Express,、Discover,、JCB,、MasterCard,、銀聯(UnionPay)、 Visaという国際ブランド6社で構成されているEMVCo。カード決済の安全と普及促進のための団体です。そして業界で「EMV」と言えばICカード決済仕様を指しますが、他にもApple Payなどで用いられているトークナイゼーションなど様々な仕様を定めていることでも有名です。

そのEMVCoが2017年7月、「QR Code Specification for Payment Systems」と銘打った新たな仕様を公開しました。

EMVCoのQRコード仕様はこちらからダウンロードできます:

今までEMVCoの非接触決済と言えばNFCによる近接通信によるものでしたが、ここへきてQRコード対応も明確に打ち出したかたちです。ドキュメントには書かれていませんが、中国モバイル決済の拡大を意識した動きと見ていいでしょう。

銀聯のプレスリリースによると、EMVCoにおけるQRコード決済の仕様策定を主導したのは同社。QRコード決済の「震源地」である中国ならではの危機感の表れでしょうか、ワーキング・グループ組成からわずか12ヶ月で仕様公開というスピード推進です。

今回公表された仕様の表紙には「Consumer-Presented Mode」と大きく明記してあります。消費者が持つモバイル端末でQRコードを提示する、との意ですが、そうなると店舗端末がQRコードを提示する「Merchant-Presented Mode」もあると思われます。

グローバル標準であるEMVCoの仕様。今回のQRコード仕様準拠のサービスも2017年末ごろには台湾に導入される模様ですし、タイでは中央銀行が同国の金融機関と加盟店に推奨するQRコード仕様という位置づけを獲得しています。

アリペイとウィーチャットのQRコードに対して、EMVCoのQRコード決済がどのような広がりを見せていくのでしょうか。いずれにせよQRコードによる非接触決済は世界的な拡大期に入ろうとしているのかもしれません。

関連情報:

PCI SSCの「モバイルPIN」

次に、Payment Card Industry Security Standards Council(PCIセキュリティ標準協議会)の略であるPCI SSCの動き。American Express、Discover、JCB、MasterCard、Visaで構成されています。EMVCoと違って、銀聯が入っていません。カード決済のセキュリティ標準であるPCI DSSを策定し運用している団体です。

こちらは、スマートフォンやタブレットを店舗決済端末として用いる場合のPIN(暗証番号)の入力方法に関するもの。現状ではEMV取引時のPIN入力は専用のPINパッドが必要なのですが、その条件を緩和して、モバイル端末のタッチパネルからの入力を許容しようという動きです。

これは、モバイル決済の世界的大手であるSquareによる、オーストラリアと英国での18ヶ月に及ぶ実証実験の結果を踏まえてのもの。2017年9月にもPCIから世界標準として公表される見込みとのことです。

PIN入力に専用機器が不要となると、店舗端末はさらにシンプル化されることになり、基本的にモバイル端末+カードリーダのみで十分になります。店舗にとっては導入コスト低減やレジ周りの簡素化といった利点となる可能性があり、中小事業者へのカード決済導入のハードルが一段と低くなることになります。

スマートフォン「だけ」で導入できるアリペイとウィーチャットに対して、カード決済インフラのセキュリティという利点を損なわず、店舗側の負担を軽減しようというPCI SSCの動き。実現すれば、「カード決済のモバイル化」をさらに促進することになりそうです。

関連情報:

(インフキュリオン シンクタンク事業部 森岡剛)

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