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株式投資型クラウドファンディングの流動性を高めるフィンテック

金融業界の活性化だけでなく、企業の資金調達面の効果も期待されているフィンテック。オンラインで多数の小口投資家を集めることができるクラウドファンディングもそのようなサービスです。今回は、「投資型クラウドファンディング」のうちスタートアップ企業への投資に関する海外事例を紹介します。

「貯蓄から投資へ」というかけ声のもと、個人による投資と資産運用を広めようとしている日本。多様な投資手段を整備する観点から、投資型クラウドファンディングの促進は2014年の金融商品取引法改正にも盛り込まれています。

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今回紹介するのは、スタートアップ企業の株式を対象とするクラウドファンディングの海外事例です。

個人による投資と資産運用が根付いている英米においても、未上場企業への投資へのハードルは、普通の個人投資家にとっては高いものでした。そこに目をつけたフィンテック起業家も多く、今では複数のフィンテック企業が、スタートアップ企業の株式を対象とする投資型クラウドファンディングサービスを提供しています。

このようなサービスを利用すれば、個人投資家であっても、成長性の高いスタートアップ企業を見つけ、小口の投資を行うことができるようになりました。しかしまだ投資家にとっての課題が残っていました。

大きな課題は、流動性。クラウドファンディングで首尾よく投資しスタートアップ株式を手に入れたとしても、その株式を売却してリターンを得るのは数年後、というのはザラです(そもそもリターンを得られないケースも当然あります)。途中で株式を売却しようにも、市場が無いために買い手を見つけて交渉するのは極めて困難でした。

流動性という課題の解決に乗り出したのが、英国のSeedrs社。スタートアップ株式投資のクラウドファンディング事業者で、500社以上のスタートアップ企業が、20万人以上の小口投資家から、合計2億1000万ポンドの資金調達を支援した実績があるとのこと。そのSeedrs社が、今度はスタートアップ株式の流動性を高めるための二次マーケットの運営を2017年夏から始めるというのです。

Seedrs社Webサイト:https://www.seedrs.com/

Seedrs社が運営する市場は、毎月の最初の火曜日から1週間だけ開かれるとのこと。そこでは、売り手と買い手が、同社が扱うスタートアップ株式を売買することができます。ここで面白いのは、売買価格はSeedrs社が設定するということ。業界の標準的な価格設定手法を用いるとのことですが、上場前の企業のバリュエーションへの影響を抑えるため、Seedrs市場での価格決定という要素は排除しています。

また、Seedrs市場で株式を購入できるのは、既に対象企業に投資している買い手のみ。つまり、新規購入はできず、買い増しのみができることになります。

Seedrs社は、同社ユーザ向けチャットルームからのフィードバックを参考に、Seedrs市場の開始を決めたとのこと。一度投資してしまうと、長期間その資金がロックされてしまうという課題のあったスタートアップ投資において、制約はありつつも流動性を確保することは、投資型クラウドファンディングの利便性を高めるものとして期待できます。

企業の資金調達の円滑化は、2017年5月に発表された経済産業省「FinTechビジョン」における目玉の一つでもあります。個人への投資の浸透において国内外では大きな差異があるとは言え、Seedrs事例は日本においても大いに参考になると考えます。

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