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フィリピンの個人間送金事情に向き合うFintech

昨今日本のFintechシーンでは、LINE Payに続きpaymo、Kyashのリリースなど個人間送金が盛り上がっています。一方フィリピンでも、個人間送金についてスタートアップ企業のAyannah社が取り組んでいますが、そのスキームはフィリピンならではのものとなっています。

フィリピンでは個人間送金について元々の事情が日本とはかなり異なり、固有の課題があります。そんな中でのAyannah社の課題解決の取り組みは興味深いものがあり、今回ご紹介したいと思います。

 フィリピンの個人間送金事情

フィリピンは出稼ぎが盛んな国です。国内で農村から都市部への出稼ぎが多いほか、海外にも人口の約1割にあたる1000万人が出稼ぎに出ています。

彼らのような労働者の家族は、生活費を送金で受け取ります。しかしフィリピンではアンバンクド層(=銀行口座を持たない層)がまだまだ多く、Ayannah社によれば世帯ベースで80%を占めています。従って、受け取り手は口座で生活費を受け取るのではなく、送金事業者の代理店に足を運び直接現金を受け取ります。

ただ農村の場合そのような代理店へのアクセスが悪く、また特定の代理店に受け取りの顧客が集中するせいで現金のストックが不足してお金を受取れない場合がありました。フィリピンは日本以上に現金社会であり、これは生活に支障が出る大きな問題です。

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Ayannah社のアプローチ

このような不便を解消するべく生まれたのがAyannah社の「Sendah Remit」という送金ネットワークです。「Sendah Remit」は、Western Union、Moneygramを筆頭とした複数の送金事業者の代理店同士を接続し、相互の送金・受取を可能にしています。この接続はAyannah社がSaaSを提供することで実現しています。日本で言うと銀行同士を接続し他行振込を可能にしているシステムである「全銀ネット」がイメージとして近いかも知れませんが、「Sendah Remit」はSaaSの形を取っているため導入ハードルが低い点が特徴と言えるでしょう。

これに加えてAyannah社は「Sendah Direct」という事業も展開しています。これはドラッグストアなど小売店が加盟することで、プリペイド携帯のチャージや簡易的な保険の販売などのサービス代理店になることができるものです。加盟店は登録後、専用のアプリかSNSを利用して業務のネットワークにアクセスできます。SNSに対応しているのは、インターネット環境の無い場所でも業務を行えるようにするためです。このような手軽さから加盟店は広がり現在7000店舗以上に上ります。特筆するべきは、こちらの加盟店も上述の「Sendah Remit」のネットワークに接続されており、送金・受取が可能になっている点です。

以上のように導入ハードルの低さを武器にネットワークを急速に拡大した結果、農村においても送金を受け取る場所の選択肢が大幅に広がりました。以前に比べ、より身近なお店で、確実に受け取れるようになっています。

各国において都市部では開発が進む中で、農村はその国固有の事情が色濃く残りやすく、生活に密着するような問題でもなかなか解決されにくいことがあります。Ayannah社の送金ネットワーク事業は、そのようなフィリピン固有の問題に向き合った結果として独自のスキームを生み出し、課題解決に導いている事例と言えます。

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