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経済産業省「FinTechビジョン」が示すFinTech社会への道筋

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2017年5月8日、経済産業省が「FinTechビジョン」を公表しました。個人と中小企業にとってのFinTech社会のビジョンを示し、その実現に向けた包括的政策パッケージをまとめています。今回はそのポイントを紹介しようと思います。

pinkypills/Bigstock.com

FinTech(フィンテック)のFinは「金融」ということで、「FinTechは銀行を中心とする動き」と想像する読者も多いかもしれません。しかし「社会の血液」であるお金の健全な循環を促進、それが金融の役割です。テクノロジーによる金融の活性化であるFinTechのインパクトは、金融業界に留まるものではなく、個人の消費生活や資産形成、そして企業(特に中小企業)の収益性にも大きく関わってくるものです。

日本においては、金融業界を監督する立場から金融庁が、そして消費者と企業の経済活動の観点から経済産業省が、FinTechを推進してきています。金融庁のほうは2年連続の銀行法改正など様々な施策を打ってきていますが、このたび、経済産業省は今までの議論と検討を踏まえた総合的な提言として「FinTechビジョン」を公開しました。その内容はまさしく、個人と中小企業にとってのFinTech未来社会を描き、そこに至る道筋を示すものとなっています。

経産省「FinTechビジョン」のポイント

キャッシュレス化の進展、消費生活や企業活動におけるモバイル化の浸透、ブロックチェーンなど新技術による新たな決済サービス、といった、既に浸透しつつある経済産業の変化を背景に、「FinTechビジョン」では個人と企業(特に中小企業)の視点からFinTechによる未来社会のビジョンを示します。

  • 個人の消費生活や資産形成がどのように変わるか
  • 中小企業の生産性や資金調達がどのように変わるか

という視点です。

そして未来のFinTech社会に向け、個人の生活面では「消費の高度化・活性化」と「個人の効率的な資産形成」というプラスの変化を目指すとし、特に前者についてはキャッシュレス決済比率に関する政策指標を設定するとしています。

さらに中小企業活動の面では「資金調達の強化」「バックオフィス業務の効率化」というプラスの変化を目指すとし、それぞれサプライチェーンの資金循環速度(SCCC)とバックオフィス業務のクラウド化率に政策指標を設定するとしています。

そしてこのようなビジョンの実現に向けた対応の基本的方向性を4つ挙げ、それぞれについて具体的施策を列挙しています:

  1. FinTechの前提条件を整える
    • 個人が自身に関するデータを管理し利用する手段やルールの整備
    • 企業グループ内、企業間のデータ共有の円滑化
    • 決済のキャッシュレス化(=電子化)、そしてレシートなど証憑類の電子化の促進
    • 新技術をすばやく取り入れられるような、セキュリティ対策
  2. 「お金」の流れのデジタル化による円滑化
    • 本人確認がデジタル完結する仕組みづくり
    • 行政手続きのデジタル化と、行政データ利用を促進するプラットフォーム
    • 銀行・クレジットカード企業のオープンAPI促進
    • ブロックチェーン技術活用の促進
  3. 中小企業等のFinTech活用を後押し
    • バックオフィスのクラウド化推進、インターネットバンキング利用促進
    • 金融と商流のEDI接続
    • FinTechによる革新的な資金調達手段の促進
    • サプライチェーン全体の資金循環効率の向上
  4. 試行錯誤によるイノベーションを促す仕組みづくり
    • 「レギュラトリー・サンドボックスなどFinTechイノベーションを促進する規制・制度改革
    • グローバル競争力のあるFinTech拠点づくり
    • FinTech人材確保(育成、転職・再就職、兼業副業など)

(出所:経済産業省「FinTechビジョンについて」(2017年5月)の記載内容に筆者が加筆修正)

2015年から「産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)」、そして「FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合(FinTech検討会合)」で幅広い分野の有識者と実務家による議論を重ねてきただけあり、今回の経済産業省「FinTechビジョン」は、FinTech社会への道筋としての課題と対策を網羅するものになっています。

なお、弊社代表であり、一般社団法人FinTech協会の代表理事である丸山弘毅も、FinTech検討会合のメンバーとして議論に参加してきました。

特に、スタートアップ企業によるイノベーション促進の視点では、「本人確認のデジタル完結」や「レギュラトリー・サンドボックス」が具体施策に盛り込まれたことを歓迎します。これらはスタートアップ企業にとっての大きなハードルであったのですが、これらを取り除くことでイノベーションを促進しようという明確な意思が見えるからです。

この「FinTechビジョン」によって、FinTech未来社会に向けた経済産業省のスタンスが明確になりました。FinTechが金融業界にとどまらず、個人と企業の活動をもっと自由に、もっと効率的にすること、そしてFinTechによる新サービス創生が経済と産業をよりよい方向に変えていけるよう、この「FinTechビジョン」の具体施策の速やかな実現を期待します。それとともに、われわれインフキュリオンも、スタートアップの立場からFinTechと日本の産業に貢献していくという思いを新たにしました。

(インフキュリオン シンクタンク事業部 森岡剛)

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