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フィンテックイベントFinovateFall 2015に見るサービス開発の動向

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2015年9月16日・17日に米国ニューヨークにて開催されたFinovateFall 2015。多くのスタートアップを含む70社のフィンテック企業が行う7分間のデモで構成される、フィンテックの祭典です。今回はインフキュリオンからも参加し、フィンテックの先端動向を調査してきました。

既に何度かこのインサイトでも取り上げてきましたが、本稿ではFinovateFall 2015を通して見えた来た欧米のフィンテックのサービス開発動向に関して考察します。

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まず上図は、FinovateFall 2015の全体概要。Finovateは2007年に始まったイベントですが、その大きな特徴はプレゼンフォーマット。パワーポイントスライドなどの説明資料の使用は禁止で、檀上でデモを行いつつのトークと画面投影のみで自社サービスをアピールします。今回は2日間にかけて70社のフィンテック企業がデモを行いました。

今回の聴衆は約1,600名。事前登録ベースの参加者名簿を見ると、日本企業約30社から約60名程度が参加していたようです。日本におけるフィンテックへの関心の高さが窺えます。

ほとんどの登壇企業は、デモによって自社サービスを金融機関にアピールすることが狙い。サービスを「ホワイトレーベル提供」、つまり銀行など金融機関ブランドで顧客に提供可能であるとするフィンテック企業が大半でした。技術を持つフィンテック企業と、ブランドや顧客基盤、支店網など業務体制を持つ金融機関。こういうところからも、フィンテックと金融機関の共生関係が大前提である「フィンテックエコシステム」の存在を肌で感じることができます。「フィンテックは金融機関にとって脅威か機会か?」という議論の段階は通り越して、共存する部分と競争する部分があることはもう当たり前に受け止められています。

デモ全体を通して感じたキーワードは以下です。

  • モバイルUX(User eXperience; ユーザー体験)による金融サービス利用層の拡大
  • 80年代以降生まれのミレニアル世代の取り込み
  • 事業者向け金融サービスでは、金融機関のサポートが薄かった中小事業者(SME; Small and Medium-sized Enterprises)を対象とするもの多数
  • 技術的には、自然言語処理、人工知能、ビッグデータ分析、生体認証、イメージ処理の活用が進展

70社のデモを、サービス領域でプロットしたものが以下の図です。消費者(C)向け・事業者(B)向け・金融サービス事業者(F)向けに大きく分けられますが、金融サービスの広い領域において多様なフィンテックが存在することがわかります。欧米の金融業界において進むフィンテックの成熟が見て取れます。

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FinovateFall 2015で気づくことは、フィンテックの例としてよく挙げられるピア・トゥ・ピアレンディング(P2Pレンディング、個人間融資)やPFM(Personal Financial Management; 個人資産管理)が姿を消していること。替わって、モバイルUXによる円滑な口座開設/新規契約や、80年代以降生まれのミレニアル世代向けサービスが大きな存在感を持っていたことです。

また、金融サービス事業者向けフィンテックも多数登壇しており、個別の金融サービスを高度する「金融機関のアンバンドリング化」が進行しつつある状況が見て取れました。

もちろん、FinovateFall 2015がフィンテック領域の全てではなく、応募企業や運営側による選考など当事者たちの思惑も反映されています。とは言え、やはりフィンテックの祭典と言えるこのイベント。2015年秋時点のフィンテック最前線の動向を示すものと言えるでしょう。

FinTech協会設立などで盛り上がりを見せている日本のフィンテック。我々インフキュリオンも、世界のトレンドを見極めつつ、日本発の金融サービス高度化に貢献していきたいと考えています。