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サムスンペイとMSTの日本市場における可能性

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mipan/Bigstock.com

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2014年のApple Pay(アップルペイ)の登場から盛り上がりを見せている海外モバイル決済。サムスンもSamsung Pay(サムスンペイ)を韓国で8月20日に開始、さらに米国でも9月28日に開始しています。サムスンの発表によると、韓国ではローンチからの1ヶ月でSamsung Payの取引件数は150万件、取扱高は3,000万ドルを超えたとのことで、米国市場はどのように反応していくのか関心が集まっています。

米国モバイル決済サービス

Apple Payと同様に、ユーザーが自分のクレジットカード/デビットカード/プリペイドカードを登録して使用する、カード登録型モバイルウォレットであるSamsung Pay。非接触EMV決済(いわゆるNFC決済)、EMVCo型トークナイゼーション、そして決済時の指紋認証などの機能もApple Payと同等ですが、大きな差別化要因はMST(magnetic secure transmission、磁気セキュア伝送)。これは非接触EMV非対応の店舗端末を相手に、非接触決済を実現してしまうという驚きの技術。

本稿は、サムスンペイとMSTの日本市場における可能性について考えてみたいと思います。

サムスンペイとMST

MSTとは、もともとボストンのベンチャー企業LoopPay社が開発した技術です。同社は2015年2月にサムスンが買収し100%子会社となりましたが、LoopPay社のサイトはまだ生きていて、従来どおり自社事業も継続しているようです(https://www.looppay.com/)。

LoopPay社のプロダクトは、ドングル型のカード読み取り機とスマホケース。決済時には、スマホに格納されているカード情報をスマホケースにBluetoothで送信し、MSTを搭載したスマホケースが店舗端末と通信することで、店舗の磁気端末を相手に非接触決済を実現します。

SamsungはMSTのハードウェアをGalaxy端末に搭載することで、スマホケース無しでSamsung PayでのMSTを実現しています。

と、口頭や文章で説明しても、筆者の経験では、MSTのイメージはなかなか相手に伝わりません。百聞は一見にしかず、MasterCardのSamsung Pay紹介動画をご覧になってみてください。

MasterCardのSamsung Pay紹介動画

ユーザー自身が、店舗の決済端末にスマホをかざして決済しています。ここで店舗端末は磁気端末であることがポイント。Apple Payだったら使えない店でも、Samsung Payならば使えますよ、というアピールです。

日本市場における課題

海外で盛り上がりを見せるApple PayやSamsung Payなどもモバイル決済。日本上陸はいつごろか、業界関係者でなくとも気になるところです。日本においてもiPhoneユーザーは多いですが、Apple Payの普及可能性となるとやはり非接触EMV未普及という事実がハードルになります。アプリとしてのApple Payが日本に上陸しても、いまのままでは使える店がほとんどありません。

ならばSamsung Payはどうでしょうか。こちらは非接触EMVは前提でなく、MST経由での従来型店舗端末での利用も可能です。しかしMSTがいかに素晴らしくとも、日本の商習慣には整合しない面があることも事実です。上記の動画を見てもわかるとおり、Samsung Payは「ユーザー自身がスマホを店舗端末にかざす」という前提になっています。米国小売ではカード決済時にカードをスワイプしたり差し込んだりするのはユーザー自身。どのお店に行っても店舗端末は顧客側に設置してあります。ウェイター/ウェイトレスにカードを渡してしまう飲食店は例外ですが、最近のニューヨーク出張で見たところ、タクシーにおいても顧客自身が操作する決済端末が設置してある例がありました。

タクシー  DSC_0362
(タクシーの決済端末、ニューヨークにて筆者撮影)小売などのカード決済時はカードを店員に渡してしまうのが一般的な日本市場。Samsung Pay利用時にスマホを店員に渡してしまうのには抵抗ありますし、渡してしまうと指紋認証が通りません。電子マネーのように、ユーザー自身がカード/スマホをかざせるように端末が設置されればよいですが、既存の磁気端末をそのように設置する意義は小さいですし、非接触EMV端末を新たに設置するならばApple Payに対する優位性は小さくなります。MSTという武器でApple Payに対抗していくサムスンの戦略ですが、日本市場における有効性は未知数。技術的要素だけでなく人間の行動の変革が必要な決済領域。海外発のモバイル決済サービスが日本市場を席捲するには、まだクリアしなければならない課題は多いようです。

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(インフキュリオン シンクタンク部門 森岡剛)

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