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ラザダ(Lazada)社の事例に見る東南アジアECの決済事情、そして活発化する域外からの参入

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echi/Bigstock.com

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活発な経済成長を続ける新興国の多い東南アジア。EC市場はまだ小売市場の1%未満ですが、スマートフォンの急速な普及とともにEC取扱高も拡大を継続する見込みです。日本のECではクレジットカード決済が一般的ですが、東南アジアのクレジットカード保有は10%未満。さらにカード保有者も、オンライン不正を心配するあまり、ECでのカード利用は進んでいません。

決済と配送で独特の要件を持つ東南アジアEC市場ですが、大きな成長機会を目当てに、域外からの参入も活発です。本稿ではラザダ(Lazada)社の動向を中心に、東南アジア市場の決済事情と域外参入の動向を紹介します。

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2012年、ドイツのインキュベーターであるロケット・インターネット(Rocket Internet)によって設立されたEC会社のラザダ。現在、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナムに展開中です。英国の大手小売テスコ(Tesco)やシンガポール政府の投資会社テマセク(Temasek)などが合計6億ドル以上の出資を行うなど、その拡大が注目を浴びています。

例えば同社のマレーシアサイト(http://www.lazada.com.my/)を見るとよくわかりますが、電子機器からビューティーまで幅広い商品を扱うECサイトです。「Amazonのマネ」との批判も内外からあるようですが、東南アジアの多様な言語や習慣、それに検索やSNSなどの地域ごとのユーザーの行動様式の違いに対応したサービス提供で成功していると同社は指摘します。

日本などの他地域との差異で最も重要なのは、カード決済が未普及である点。ラザダ社はそれに対し、キャッシュ・オン・デリバリー、つまり代金引換配達で対応しています。ただし、インドネシアやフィリピンなど島嶼国家では配送サービスが未成熟であるので、商品の3分の1は自社のバンやバイクで配送を行っています。

代金引換配達にも課題はあり、例えばあまり早く配達しても顧客が現金を準備できていないことがあります。そういったことも考慮し3回まで訪問を行うなどしています。そうした配慮はユーザーにもそれは伝わっているようで、同社サービスのいいところをアンケート調査したところ「キャッシュ・オン・デリバリーが便利」が一位、それに「分割払いなど決済手段が選べる」などといった決済・配達の利便性が上位に入ったとのことです。

ほかにも無料で返品を可能としたり、一定金額以上の購入で配送料を無料にしたりといったサービスが消費者に受け入れられ、拡大しているようですが、まだ規模は大きくはなく、利益を挙げるには至っていません。2014年の純収益(net revenue)6000万ドルに対して、EBITDAは5000万ドルの赤字でした。現在は、自社在庫品の販売から、ECモールへの転換の途上とのことです。

ラザダは域外からの参入の例ですが、ほかにも域外からの投資や参入では以下のような動きがあります。

  • 日本のソフトバンクが、米セコイア・キャピタルとともに、インドネシアのトコペディア(同国最大級のECモール)に1億ドルを出資(2014年10月)
  • 日本のLINEが、タイにおいて、同国aCommerce社と提携し、同国初の食料品のオンラインデリバリーを開始(2015年2月)
  • 日本の楽天はシンガポールサイトを既に立ち上げ済

また、域外参入ではありませんが、インドネシア現地の華人財閥リッポーグループ(Lippo Group)もマタハリモール(MatahariMall)を開始し、EC事業に参入しています(2015年2月)。

外からの投資意欲の活発化に対して、インドネシアは、「自社在庫を運営するタイプのEC事業者」への海外からの投資を禁じる法律を制定しています。(ソフトバンクが投資したトコペディアは自社在庫を持たないECモールのためOK。)そのためインドネシアに関連しては、米Amazonと中国のアリババから以下のような動きがあります。

  • 米Amazonは、一定の条件を満たせば、米国からの配送を無料にするサービスを開始
  • 中国のアリババは、中国からの商品配送を効率的に行うため、Aliexpressのインドネシア拠点を設立

アリババはさらに、2014年5月にシンガポールの郵便事業者のSingPostの10%を取得、第2位株主となりました。インドネシアを含む東南アジアでの配送の効率化が目的と思われます。

経済発展とともに活発化する東南アジアのEC市場、域外からの参入も活発です。日本企業にとっても重要な展開先である同地域。今後も随時、動向を紹介していきます。

参考情報

(インフキュリオン シンクタンク部門 森岡剛)

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