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ソフトバンクカードに見る携帯キャリアのプリペイドカード戦略

Tupungato/Bigstock.com

大手携帯キャリア3社のうち、ドコモは「ドコモ口座」によるVisaプリペイド、KDDIはMasterCardプリペイドである「au Wallet」がありますが、遂にソフトバンクからVisaプリペイド「ソフトバンクカード」が2015年3月6日から提供開始となりました。今回は、「ソフトバンクカード」を軸に、携帯キャリアのプリペイドカードの戦略的特徴について考察します。

携帯キャリアは通信網と巨大な顧客基盤、そして通信料などを後払いで請求・回収する業務インフラを備えており、もともと後払い型の決済サービスと高い親和性を持っています。それを活かして、デジタルコンテンツの購入金額を通信料と合算して後払いできる「キャリア課金」と言われるサービスもあり、「ドコモケータイ払い」「auかんたん決済」「ソフトバンクまとめて支払い」といった名称で提供されてきました。

近年、ブランドプリペイドの発行が盛り上がりを見せていますが、携帯キャリアも例外ではありません。ドコモからは「ドコモ口座」でのVisaプリペイドがあり、KDDIは2014年からMasterCardプリペイドである「au Wallet」を発行開始していましたが、ソフトバンクからはVisaプリペイドである「ソフトバンクカード」が2015年3月から提供されます。

携帯キャリアによるブランドプリペイドの特徴のひとつは、「後払いに近いプリペイド」であることです。上記3社のブランドプリペイドはそれぞれ「キャリア課金」からのチャージを設定可能としており、スマートフォンなどでの操作で簡単にチャージ可能としています。さらに「au Wallet」では、バリュー残高が設定値を下回った際に自動でチャージを行うオートチャージも設定可能で、残高を意識しないで利用できるという点でクレジットカードに近い使い方ができるようになっています。

今回ソフトバンク・ペイメント・サービスが発行する「ソフトバンクカード」ではさらに進化したチャージ機能が提供されます。残高をゼロにしておいても、決済時に必要金額だけチャージして即時利用するという「おまかせチャージ」です。ここまでくると、もはやクレジットカードとほぼ同等の後払い機能と言えるでしょう。

さらに「ソフトバンクカード」はバリューの送金や金融機関口座への振込という、資金移動業に分類される機能も提供しており、ソフトバンク・ペイメント・サービスの資金移動業登録を活かした特徴的なサービスとしています。

与信審査不要のため従来のクレジットカード層以外にアプローチできる商品としてカード業界から期待の集まるブランドプリペイド。携帯キャリアは、携帯ユーザーがほぼ2年おきに訪れるショップという入会チャネルも持っており、クレジットカード会社よりも先に若年層にアプローチしてプリペイドカード入会を案内することができます。プリペイドカード利用でカード決済に慣れてもらい、さらには上述した後払い的サービスの利便性も体験してもらうことで、将来のクレジットカードへの乗り換えに繋げられると期待されます。このような顧客導線を持った携帯キャリアのカード事業が今後拡大していけば、従来型のカード会社にとって大きな脅威となってゆくかもしれません。

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