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決済ビジネスを通した地域経済活性化への貢献

SeanPavonePhoto/Bigstock.com

通常、クレジットカードなどの決済サービスや、お買い物ポイントのような特典は、どこの店でも同じように利用できることがアドバンテージとなります。しかし、あえて利用できる店やキャンペーン対象エリアを限定することで、取扱高や会員数を増やしているカードがあります。今回は、ヒト・モノ・カネを循環させ、地域活性化に取り組む事例をいくつか紹介します。

クレジット会員向け地域優待サービス/千葉銀行

千葉銀行は、提携先加盟店で千葉銀行のクレジットカードを使うと、商品代金の割引やクレジットカードのポイント優待を受けられる「地域優待サービス」を実施しています。
提携先のラインナップには、銀行ならではの特色が見られます。地元スーパー、ドラッグストア、ガソリンスタンド、レジャー施設、ショッピングモール等、日常利用から行楽まで、多様な業種に提携先があります。また、系列や競合といった企業間の関係に縛られないため、例えばドラッグストアでは、マツモトキヨシもくすりの福太郎も名を連ねています。対象施設は千葉県内に留まらず、東京都、埼玉県、茨城県の一部を含めた地域を「広域千葉圏」とし、2014年4月には、ららぽーと新三郷(埼玉)やCOREDO室町・日本橋(東京)も加わりました。
地域における個人消費を活性化したいという理念が支持され、参加企業は拡大しています。参加した企業には、半年に一度、地域優待サービスが実際の送金に結び付いているかを示す資料が届き、効果を数字で確認できます。千葉銀行によると、参加企業によってカードの利用が年平均2~6割増えているそうです。

ごうぎんデュプリ/山陰合同銀行

山陰合同銀行では、2013年11月から独自の電子マネー「ごうぎんデュプリ」(以下、「デュプリ」)の取扱いを開始しました。 デュプリは山陰地区限定のプリペイド式電子マネーで、同行の16歳以上の普通預金口座保有者であれば、誰でも申し込みできます。プリペイド式電子マネーを発行する理由としては、
年齢制限や審査でクレジットカードを保有できない層を会員として取り込むこと
クレジットカードでは銀行の収支が赤字になる少額決済において、電子マネーを利用してもらうことで、カード取扱高の増強と、クレジットカード事業の収益改善が期待されること
などがあるようです。
さらに、デュプリは山陰地域限定という点に特色があります。これまでクレジットカードで貯まったポイントは、期限経過で失効するか、カードブランドの商品に交換され、地元に還元されませんでした。その解決策として、地元の特産品と交換できる独自ポイントプログラムがありましたが、そのポイントの受け皿にデュプリを加えることで、ポイントの地消地産と地元事業者との共栄が図られています。

GOODYカードJCB/足利銀行

GOODYカードJCBは、足利銀行とJCBが提携して発行するキャッシュ一体型クレジットカードです。カード利用金額1000円ごとに、JCBのOki Dokiポイントが1ポイント付与されます。
地元企業との提携により、地域優待が受けられるRC(リージョナルカード)加盟店で利用した場合は、割引が適用されたり、Oki Dokiポイントが2~3倍付与されたりする特典があります。また、JCBの提供するポイント交換商品の他に、栃木県内で百貨店業態のショッピングセンター等を運営する福田屋百貨店の商品券に交換することも可能です。
なお、上記に紹介したカードは、ブランドカードとして対象地域外で利用することも可能です。

これらの取組の成果は、送客による地域の消費活性化だけでなく、そのコンセプトに共感した地元企業の加盟店化という側面が大きいと考えられます。どこでも同じように使えるという会員にとっての利便性より、あえてサービスを地域限定とすることで、その地域でのアクセプタンスが拡大した結果、取扱高が伸びた点は、地元指向が強まる近年の風潮にもマッチします。
少子高齢化・人口減少が進む中、既存エリアでの成長を目指すモデルの紹介でした。

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