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資金決済サービス高度化① 即時振込

2014年11月5日、日本銀行より「(日銀レビュー)主要国における資金決済サービス高度化に向けた取組み」が公表されました。

出典

資金決済サービスを高度化する様々な方策のうち、特に諸外国を中心に取組みが進んでいる①即時振込の 24 時間 365 日化と、②国内送金における商取引情報の活用(金融EDI)を取り上げ、資金決済サービス高度化の意義と主要国における資金決済サービスの高度化に向けた近年の動きが論じられています。

ここで、第1回として即時振込、第2回として金融EDIの議論をご紹介したいと思います。

まず、即時振込の 24 時間 365 日化を、「支払人から受取人の銀行口座宛てに、入金をほぼ即時(依頼から数秒~数分程度)に行う金融サービス」と定義されています。以下、「24/7 サービス」と略します。

24/7 サービスを導入している主要国として、英国、シンガポール、スウェーデンの現状が紹介されており、これらの国で見られる共通の特徴として、以下の点が挙げられています。

  • 24/7 サービスの運営は、銀行等が出資する民間団体や銀行協会に任され、主要行が 24/7サービスを牽引するケースが多い。
  • 対象となる取引額は、不正送金のリスクを低減する目的などから上限を設け、小口資金の決済に特化している。
  • 民間部門が提供する銀行間決済システムと中央銀行が提供する当座預金(中銀当預)を用いた即時決済を組み合わせながら 24/7 サービスを提供している。

また、英国では

  • 時点ネット決済方式を採用しているため、未決済残高の積み上がりに伴うリスクに対し、様々な備えを設けている。

という特徴があるようです。
24/7 サービスのメリットは、家計や企業が資金を効率的に利用できることです。他方、銀行にとってはシステム開発面で相応の費用がかかる上に、そのコストを顧客に転嫁できないリスクがあります。これは次回テーマの金融EDIも同様です。

これらの国で24/7サービスの取組が進んだのは、①政治の強力なリーダーシップ(英国)や、②ノンバンクの決済サービスへの参入を契機とした危機感(スウェーデン)が背景にあります。

日本では、2014年 6 月に政府から公表された「『日本再興戦略』改訂2014」において、わが国の金融・資本市場活性化の一環として、資金決済サービスの高度化について検討を進めることとされていますが、インフラ整備に対するコストを理由に、業界の反応は消極的なようです。

他方でりそな銀行では、②の理由から、グループ内口座間では即時振込を導入しました。

銀行への補助金等がつくのが先か、業界で結束し自発的に即時振込を進めるのが先か、
今後の銀行業界の動きが注目されます。